建司の書斎

「キリスト者の希望」、「愛を学ぶ」等の著者、故相澤建司の遺稿説教原稿・聖書研究など。

2021-07-17から1日間の記事一覧

Ⅰ.囚われ人の希望-11 実存の変貌-ドストエフスキーの場合

実存の変貌-ドストエフスキーの場合 ドストエフスキー、フランクル、ゴルヴィッツアー、ソルジェニーツィンの作品、体験記を読み比べると、フランクルとゴルヴィッツアーにおいては、囚われの体験を思索的に深めている感じはあるが、彼ら自身が実存の変貌を…

Ⅰ.囚われ人の希望-10 石の下の詩と真実

石の下の詩と真実 この数年の間に「囚われ人の希望」の形のうちで、ひときわリアルに感じだしてきたポイントがある。それはソルジェニーツィンが「収容所群島」の第五章で述べている「石の下の詩と真実」における希望の形である。 ソルジェニーツィンは収容…

Ⅰ.囚われ人の希望-9 神義論

神義論 神義論とは、正しい者が不当な苦しみを受け、この世で悪人が栄える事実を根拠にして、神の世界支配に疑問をいだき、神の支配が正しいかどうかについて論議することをいう。西欧では、古代ギリシャのテオグニス(前五四〇年ころ)、アイスキュロスの「縛…

Ⅰ.囚われ人の希望-8 苦しみの克服

苦しみの克服 フランクルはこう述べている「囚人が現在の生活の《いかに生きるか》すなわち強制収容所の生活のすさまじさに内面的に抵抗して身を支えるためには、囚人に《なぜ生きるのか》すなわちその生活の目的を意識させなければならない」。 フランクル…

Ⅰ.囚われ人の希望-7 現在と将来 期待の欺き

現在と将来 期待の欺き フランクルは「強制収容所における囚人の存在は《期限のない仮りの状態》と定義される」とみる。これとよく似た心理状態にあるのが、失業者である。フランクルはラテン語のフィニス(finis)という語が「終り」と「目的」との二つの意味…

Ⅰ.囚われ人の希望-6 諦めの人生

諦めの人生 諦めの人生は、パスカルが明らかにしたように、苦境にある自分の苦しみを絶えずしずめ、自分で気晴らしをしなければならない。現実には慰めを得られないものの、現在のもの、はかないもの、いわば見せかけのものをもって自らを慰める人生である(…

Ⅰ.囚われ人の希望-5 善意と愛

善意と愛 ドストエフスキーは、西シベリアのオムスクの牢獄に他の囚人と護送される途中、トボリスクの町で、デカプリストの妻たち四人の慰問を受けた(一八五〇年一月)。デカプリストとは、一八二五年一二月に反乱を企てた貴族、軍人たちのグループで「一二月…