建司の書斎

「キリスト者の希望」、「愛を学ぶ」等の著者、故相澤建司の遺稿説教原稿・聖書研究など。

偶像製造の禁止  申命4:15~19

2002-41(2002/12/22)

第二戒 偶像製造の禁止  申命4:15~19

 まず緒論を少し。申命記という名。申は申す、という意味ではなく、「重ねる」という意味で、重ねて律法の命令が語られた書、くらいの意味、関根注解。著者は単数ではなく、いわゆる申命記史家たち、レビ人に属す。書かれた・編集された時期は、バビロニアの捕囚の時期。前550年ころ。南王国ユダの王、ヨシアの前621年、神殿で律法の書が発見され、それによる王の宗教改革と関連。発見された律法の書は4~30章の部分とみられヨシア王以前の時期に属し、1~3章、31~34章は後代の申命記史家によるもの。
 4章では十戒の第2戒のテーマが取りあげられている。第2戒は、少し先の5:8~9にこうある、「あなたは自分のために刻んだ像をつくってはならない。上は天にあるもの、下は地にあるもの、また地の下の水の中にあるものの、どのような形をもつくってはならない。それを拝んでならない、それに仕えてはならない」。そしてこの4:15「あなた方は何の形の像もつくってはならない。男または女の像をつくってはならない」。24節には「あなたの神、主が禁じられた、どんな形の刻んだ像をも造ってはならない」とある。
 では何故刻んだ像をつくってはならないのか。出エジ20:4以下では「主である私はねたむ神であるから、私を憎む者には、父の罪を子に報いて3、4代に及ぼす」とあって、禁止理由は別に述べていない。これに対して申命記はこう述べている、4:12節「時に主は火の中からあなたがたに語られ、あなたがたは言葉の声を聞いたが、声ばかりで何の形も見なかった」、15節後半「主がホレブで火の中からあなたがたに語られた日に、あなたがたは何の形も見なかった。それであなたがた道を誤って(関根訳、堕落して)自分のためにどんな形の刻んだ像も造ってはならない」。33「火の中から語られる神の声をあなたは聞いた」。36「あなたは主の言葉が火の中から出るのを聞いた」。刻んだ像とは、細工人の手で造った神々の像、鋳造した像のこと、申命27:15。イザヤ44:9以下。
 これらの箇所からは、ホレブ(シナイ山のこと、申命記はホレブと呼ぶ)での神の顕現は声による顕現であったから、いかなる姿、形もなかったから、刻んだ像をつくってはならないとの禁止命令が理由づけられる。出エジ20章の十戒記事よりも、1段と深められた説得力のある解釈、説明である。
 2つのポイントにふれたい。第1。 神の顕現は、一貫して火と結合されているのが特徴である。4:33「火の中から語られる神の声をあなたは聞いた」。25「あなたの神、主は焼き尽くす火」とある。出エジ3:2「ときに主の使いは柴の中の炎のうちに彼に現れた」。13:21「主は昼は雲の柱をもって、夜は火の柱をもって彼ら・民を照らされた」。
 第2のポイント。声による神顕現の例は少年サムエルの召命、サムエル上3:15以下。預言者エリヤは神の山ホレブで神の細い声を聞いたという、列王上19:12以下。ヨブ38:1。新約ではパウロのダマスコでの回心、行伝9章。キリストの復活顕現の例など。
 4:40ではこうある「あなたは今日、私(モーセ)が命じる主の定めと命令とを守らなければならない。そうすれば、あなたとあなたの後の子孫は幸いをを得て、あなたの神、主があなたに与えようとされる地においてあなたが長く生命を保つためである」。